「生は暗く、死もまた暗い」というのは、マーラーの「大地の歌」の歌詞(原詩・李白)の言葉である。
10年ほど前、内田光子さんにシューベルトについてインタヴューさせていただいたときのこと、いつの間にか「言葉狩り」の話題になったときに、彼女が決然と言い放った言葉があった。
「目暗(めくら)とは何と美しい日本語であることか。目が暗い…こんなに美しい表現はないです」
驚く私に、内田さんはこう続けた。
「暗いは美しい、なんです」
私も、そう、思う。
だから、マーラー(と李白)が「生は暗く、死もまた暗い」と歌ったのは、「生は美しく、死もまた美しい」と同じ意味なのかもしれない。
私は昔から暗いものが好きだった。演劇がなぜ好きかといえば、全暗、すなわち闇から始まるからだ。どんな物語も、最初は闇だ。とても心が落ち着き集中できる。
ディズニーランドがなぜ非日常的に美しいか。お気づきの方も多いかと思うが、闇をうまく利用しているからである。夢と魔法の王国を演出するあの園内の照明は、ところどころかなり暗い。街灯ひとつとっても、闇の余白を残しているからこそ、光は夢のように輝くのである。同じことだ。
日本の街が暗くなくなってしまったのは、いつからだろうか。80年代あたりからコンビニやドラッグストアが急速に普及しはじめてからだろうか。あの蛍光灯をびっしり天井に敷き詰めたような、昼間のような照明が、夜の街に輝くようになって、ますます人々は暗さを避け、暗さを軽蔑するようになっていったような気がする。
なぜあのように店内を明るくするようになったのだろうか。ある人はいみじくもこう答えた。
「そのほうが商品が売れるから」
閑話休題。
今日更新したネットラジオ「林田直樹のカフェフィガロ」で宣言してしまったので、きちんとここでもご報告したい。
有料メルマガを始めることにした。
林田直樹の「よく聴く、よく観る、よく読む」
http://www.mag2.com/m/0001396250.html
ツイッターでもブログでもフェイスブックでも書けなかったこと、
ネットラジオでも話せないようなこと、
すべてじっくり書く場にしていきたいと思う。
役に立つクラシック音楽の情報も入れていきたいと思う。
どんなふうに役に立つかというと、私が親しい友人にだけ教えるような感じのニュアンスを含める、といえばご理解いただけるだろうか。
また、今回の有料メルマガでは「できるだけきちんと答える」というのも、ひとつの大きな方針である。
実は最初友人から有料メルマガの誘いを受けたときは、まったく気乗りしなかったのだが、最近になって考え直したのである。
私のようなフリーランスの人間にとって、雑誌などに原稿を書いたり、番組でしゃべったりという仕事は、当たり前の話だが編集者やプロデューサーから注文を受けるからこそ成立するものであった。
だから、出版業界、放送業界、そして私の場合は音楽業界が、最大のクライアントだったわけだ。
だが、有料メルマガは違う。「読者」が、直接にして最大のクライアントなのである。そこが面白いと思ったのだ。
どちらがよいとは一概に言えないだろう。だが、これだけは言える。つまりフリーランスの人間にとって、直接読者をクライアントとすることが、どれほど緊張感と興奮を伴う新しいタイプの仕事であるか、ということだ。
初めてのことなので、不慣れなことも多いかもしれないが、とにかく挑戦していきたいと思う。たとえ読者が数人であったとしても、その数人のことを思いながら、書いていくくらいの覚悟である。多少プライヴェートなことも入ってくると思う。
最初の1ヶ月はお試しで無料なので、気が向いたら登録していただければうれしい。もちろんいつでも退会可能である。
画像が本当に、綺麗ですね。
暗いは美しい。
そう言われてしまうと、納得してしまう自分がいます…(笑)。
メルマガ、始められるのですね。
ツイッターとブログとフェイスブック、三者の距離感に疑問を持たれていたようだったのでネットから距離を置かれるのかと勝手に思っていたら、逆に積極的に打って出る、という感じでしょうか(笑)。
今までネット上にカード情報を入力することに抵抗があり、実はネットでの買い物は殆どしたことのない私ですが、1日考えて、今回ばかりは登録させていただきました。
今後ますますお忙しくなるかと思いますが、林田さんのやりたかったものに少しでも近づけますように。
それから今後はより一層、健康管理にご注意くださいね。
期待してます。
投稿情報: えんどう | 2012年1 月19日 (木) 00:51
明日は雪になるかもしれないという夕べに帰宅して玉藻池の写真を拝見しました。芸術性に満ちていますね。水面に浮かぶ枯れ葉、針葉樹の枯れ枝のみならず、樹影も「神秘的暗さ」を宿しています。樹影は水面を傷つけず、影を宿す水面も樹木を濡らすことなく、樹木と水が共存している、これも神秘的です。
いみじくも内田光子さんが吐露なさった「暗いは美しい、なんです」。鋭く、繊細で、芸術的な表現ですね。暗さは余分な形象や過剰な明るさを包み隠して、形や色を極力抑制した「美」を見せてくれます。昼の美しさを明在系の明るさとするならば、夕暮れ、夜、明け方の美しさは暗在系の明るさと言えるのではないでしょうか。
ところで、林田さんが有料メルマガを始めることになさった由、有力な情報発信源ではないでしょうか。どうか、ここでも健筆を振るって下さい。区切りの良い所でシリーズ本(新書版)に纏めてみては如何ですか? そうなったら勿論、私も購入して一読致します。
末筆ながら林田さんの今後の御活躍を心から祈念しつつ今回の拙文を閉じます。 百拝傾首
投稿情報: leonardo21th | 2012年1 月19日 (木) 18:04
わたしも登録しました。これから毎週楽しみにしています。
投稿情報: Eno | 2012年1 月20日 (金) 09:33